あなたと夜と音楽と・・・

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
高校時代から十五年程「日本フィル友の会」の会員になっていた。コンサート情報等が入って来るし格安にチケットを購入することができたからである。クラッシック音楽を聴き始めたのは前述のようにレコード屋のお爺さん店員の影響が大きかった。それで生演奏を聴いてみようという気になったのである。そして「サタデー・ナイト イン ヨコハマ」という年六回、海のそばの神奈川県民ホールでおこなわれるコンサートに通うことになった。 

初めてコンサートへ行ったとき客席の妙な緊張感がとても新鮮であった。演奏がはじまる前にたくさんの人が咳をするのは少し滑稽であったけど、音合わせがはじまるとなんだかドキドキしたものであった、そして沈黙につづいてタクトが振られ、その最初の一音はまさに爆発のようだった。 
  

ロック・コンサートの電気的大音量のコンサートはすでに経験済みであったが、オーケストラのたくさんの人間による一糸乱れぬ音のエネルギーには、ただ!ただ!圧倒され、よく訳もわからずに感動させられたものである。 

そして怒涛のフィナーレで演奏が終わる、その瞬間!観客が今までの緊張をかなぐり捨て爆発的な拍手を贈る、私も手が痛くなるのも忘れて手をたたきつづけていた。 

コンサートが終わり駅までの港ヨコハマの街並みを歩いて行くわけなのだが、私は演奏の余韻がまだ残っているというよりも、演奏のエネルギーを体内に注入されて飽和状態になり、この気持ちを街を歩いている人すべてに伝えたいような気分になった。これは音楽の「浄化作用」とでもいうのだろうか?演奏を聴いたあとは街のカラーまでが変わってしまったような気分になった、これは良い映画を観たあとの気分にも似ている・・・・。 

思えば、最近は体験後、街のカラーが変わってしまうような出来事には出会っていない、日常生活の中に完全に埋没してしまった感じである。時間に追われ、仕事に追われ、常識に追われ、世間体に追われ・・・追われてばかりである。何かを追いかけたい、いや追いかけねば生きている意味がないではないか・・・。