風に揺れたタンポポ
Susan Cagle "Ain't It Good To Know" video
仕事の都合で降り立った駅
そこには甘酸っぱい想い出と
感傷が詰まっている
学生時代
友人の下宿がそこにあった
六畳一間
風呂なし
共同便所
当時としても
時代遅れ
バブルの時代には
まさに隔世の感
浮世離れしていた
申し訳程度に
酒や食い物を
持参して
みんなで押しかけ
冷蔵庫にあるものすべてを
食い散らし
飲み散らし
わめき散らし
朝になると散らしずくしのまま
帰ったものだった
二十数年経って
ふとした気まぐれで
訪ねる気になった
みんな同じ
おもちゃのような
新築一戸建住宅が
意地悪く
道を迷わせた
町並みは時代とともに
個性を失い
その町に住む人は顔を失う
顔も知らない(隣の他人)で
町は成り立って行く
なんとか辿り着いたものの
そこは無理につくる必要もなさそうな
殺風景な
駐車場になっていた
ここが玄関
ここが廊下
ここが便所
ここが奴の部屋
ここが冷蔵庫
そして
ここが俺の席
いい歳した大人が
ぴょんぴょん
昼下がりの駐車場を飛び回る
虚しくなって帰ろうとしたとき
タンポポを見つけた
かつて縁側に咲いていたような
いなかったような・・・
想い出せないことが
もどかしかった
風に揺れる小さなタンポポの花が
切なく
心を揺らした
タンポポの種は
やがて
風に舞い
散々になり
それぞれの(生)を営むであろう
あいつら
いったい
どうしているのだろうか・・・